Cloudflareの社内AIコードレビューで、1件あたりの処理費用が3月から8月にかけて1.22ドルから2.32ドルへと膨らんでいました。モデルの変更やトークン数の増加に伴って費用が膨らむ結果となっていましたが、同社が9月に本格的な見直しに乗り出した結果、費用は0.77ドルまで下がり、レビュー時間も4分9秒から1分32秒に縮みました。何を削って何を残したのか、その中身を見ていきます。

Cloudflare、AIコードレビューの費用を68%削減

Cloudflareは社内で使っているAIコードレビューツールの費用が膨らんでいることに気づき、2026年10月19日のブログで対応の経緯を公開しました。同社は4月の時点で1件あたりの平均費用を1.19ドルとブログで紹介していましたが、8月末には約2.46ドルまで上昇していたといいます。レビューの仕組み自体に大きな変更はなく、コーディネーターが専門のレビュアーに作業を割り振り、リスクの度合いに応じてレビューの深さを決める構成は変わっていませんでした。

9月半ばから、どこでトークンが消費されているのかを洗い出す作業に着手し、コード品質をhigh effort設定のまま保ちつつ費用を削る取り組みを進めました。その結果、直近でもっとも費用がかさんでいた2週間の平均2.43ドルに対し、現在の平均は0.77ドルです。68%の削減にあたります。ただし、これは統計的に管理された実験ではない期間も含む社内比較であり、他社で同じ削減率になるとは限りません。削減分の内訳は、レビュアー自体のコードの最適化が約40%、残りはどのモデルを選びどのeffort設定で使うかという調整によるものだとしています。Cloudflare Blog

費用増の内訳とキャッシュ活用の実態

費用がなぜ膨らんだのか、Cloudflareは複数の要因を挙げています。まず、レビューの種類の中でもっとも費用のかかる「フルレビュー」に分類される件数の割合が、3月の59%から8月には65%に増えていました。同社はこれについて、モデルの性能が上がったことで開発者がより大きく複雑な変更を出すようになり、結果としてフルレビューの対象が増えたのではないかと見ています。

ただし、費用増の主な要因はレビュー件数の増加ではなく、モデルの切り替えにあったといいます。8月初めに全レビュアーをAnthropicのモデルへ統一したところ、1件あたりの費用は1.38ドルから2.03ドルに上がりました。社内の標準レビュアーである「Codex」はClaude Opus 4.7に移行し、性能と安定性のバランスを理由にこのモデルが選ばれています。この移行で、Codexの費用は1件あたり約0.25ドルから0.88ドルへと上昇し、コーディネーター自体よりも高くつく結果になりました。

キャッシュの効き方にも変化がありました。入力の再利用を示すキャッシュヒット率は4月の85.7%から9月には97%まで伸びています。一方で、レビュー1件あたりのトークン数は91万から299万へと、3倍超に増えていました。キャッシュのヒット率が上がっても、処理するトークンの総量そのものが増えていれば、費用は押し上げられます。ヒット率の改善だけで費用が下がるわけではない、という点はこの件の分かりやすいポイントです。出典記事に記載がある内容によれば、最適化前の費用構成では出力が約23%、キャッシュの書き込みが43%、読み出しが34%を占めていたとされ、読み出し側にも相応の費用がかかっていたことがうかがえます。

キャッシュを効かせるための工夫として、固定プロンプトの末尾に区切りとなる目印を置き、共通部分と環境情報(作業ディレクトリなど)を分けて管理する方法が紹介されています。これにより、初回リクエストのキャッシュヒット率は14〜26%から91〜99.5%まで引き上げられたとのことです。また、品質・セキュリティ・性能の各レビュアーが初回リクエストを共有し、先行する担当がキャッシュの書き込みを始め、残りの担当が応答開始後にキャッシュを読みに行く方式も採用されました。これにより、レビュアー1件あたり約9セントの節約につながったとされています。

費用削減がレビューの質にどう影響したかも、同社は確認しています。著者が実際に指摘を反映した割合と、複数モデルによる盲検判定を使い、657件のfindingを分類したところ、重要な指摘は1レビューあたり0.28件から0.30件とほぼ変わらず、明確な改善や悪化とは言えない結果だったといいます。ただし、コード品質のレビューでは、medium effortに切り替えた場合に著者が反映した指摘の件数がhigh effort時の約4分の1に減り、性能レビューではmedium effortにすると重要な問題を見逃すケースがあったとされています。この比較結果を踏まえ、Cloudflareはコード品質のレビューについてはhigh effortの設定を維持する判断をしています。

用語補足:プロンプトキャッシュとトークン

プロンプトキャッシュとは、AIモデルへ送る入力のうち、同じ入力の一部を再利用する仕組みです。今回のケースのように、処理対象のトークン数自体が増えれば、キャッシュの効率が上がっても総費用は増えることがあります。ヒット率の数字だけでなく、処理量全体を合わせて見る必要がある、という点がこの記事の数字を読むうえでのポイントです。

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編集後記:68%という数字の内訳が示すもの

今回の削減率68%は、コードの最適化とモデル・effort設定の調整という、性質の異なる2つの取り組みの合算です。約40%がコード側の改善、残りがモデル選びとeffort設定の調整によるものとされており、どちらか一方だけでは同じ結果にならなかった可能性があります。また、品質面の検証では、performance reviewerがmedium effortに設定した場合に重要な問題を見逃したほか、security reviewerについても比較結果が不確かだった可能性があります。費用と品質を両方測りながら進めた取り組みだという点が、この記事の読みどころだと感じます。