エンタープライズのAI活用で「自律性を高めるほど成果が出る」という前提が崩れ始めています。Gartnerは現在稼働中のエージェント型AIプロジェクトのうち4割超が2028年まで生き残らないと予測しており、理由はコストの膨張と投資対効果の不透明さ、リスク管理の不備だとしています。モデルの性能不足ではありません。
AIエージェントは「自律性が高いほど成果が出る」という前提が揺らいでいる
過去2年ほど、企業向けAIの世界では「自律性が高いほど性能が上がる」という考え方が広く共有されてきました。計画・判断・複数ステップの実行までこなせるエージェントを作り、できるだけ自由に動かす。そうすれば成果も大きくなる、という発想です。
この前提が、実際の運用現場で崩れつつあります。VentureBeatの報道によれば、エージェント型AIで成果を出している企業は、必ずしもエージェントに最大限の裁量を与えた企業ではありません。むしろ担当範囲を絞り込み、明確なルールの中で動かしている企業が結果を出しているといいます。
この状況を示す数字が二つあります。一つはGartnerの予測で、現在動いているエージェント型AIプロジェクトの40%超が2028年までに終了するというものです。原因としてGartnerが挙げているのは、コストの膨張、ビジネス価値の不明確さ、リスク管理体制の不十分さの三つです。モデルの能力が足りないからではない、という点は明記されています。
もう一つはMcKinseyの2026年AI Trust Maturity Surveyです。エージェント型AIの導入自体はあらゆる業界で進んでいる一方、責任あるAI運用の成熟度は平均で4段階中2.3にとどまっています。ガバナンスとエージェント制御の両面で成熟度レベル3以上に達している組織は、全体の約3割にすぎません。
「能力」と「統制」のずれが競争の軸を変えている
この二つの数字を並べると、見えてくる構図があります。エージェントに何ができるか、という能力面の進化に対して、それをどう制御するかという統制の仕組みが追いついていないという状況です。
VentureBeatの記事は、この状況が競争の枠組み自体を変えつつあると指摘しています。2024年から2025年にかけての競争は、どれだけ自律性の高いエージェントを、どれだけ速く展開できるかという速度競争でした。これに対して2026年から2027年にかけての競争は、信頼をめぐる競争だとされています。最も高性能なエージェントを作れるかどうかという点から、信頼をめぐる競争へと軸が移っている、という整理です。
留意すべきなのは、この記事が示しているのは「担当範囲を絞り、ルール内で運用する企業が成果を出している」という傾向であり、特定の実装手法や技術的な制御方式にまで踏み込んだ説明ではないという点です。どのような仕組みでエージェントの権限を制限すべきか、といった具体的な設計論はソース記事からは読み取れません。
また、Gartnerの40%という予測とMcKinseyの2.3という成熟度スコアは、それぞれ別の調査に基づく数字です。二つの調査が同一の企業群を対象にしているのか、直接的な因果関係があるのかについては、記事内で明示されていません。あくまで「同じ時期に発表された、方向性が一致する二つのデータ」として並べられている点は留意が必要です。
企業側が今後判断すべきなのは、エージェントにどこまでの権限を与えるかという設計そのものと、その担当範囲を明確なルールの中に収める運用面の両方です。
用語補足:エージェント型AI(Agentic AI)
エージェント型AIとは、目標に対して計画を立て、判断しながら複数の手順を実行するAIシステムを指します。ただし「自律性が高い」ことと「成果が出る」ことは同義ではない、というのが本記事の核心です。記事中の40%やMcKinseyの2.3という数値は、エージェントの性能評価ではなく、プロジェクトの継続可能性やガバナンス体制の成熟度を測ったものである点に注意してください。
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編集後記:二つの調査が示す一致点
Gartnerの40%という予測とMcKinseyの2.3という成熟度スコアは、出所が異なる数字です。それでも両者が指し示す方向は重なっています。エージェント型AIの性能面での進化に対し、それを統制する体制が能力に追いついていない、という点です。この記事を読んで気になったのは、企業がエージェントの権限をどう設計し、誰がその権限を見直す責任を持つのか、という運用の中身がまだ具体的に語られていないことです。数字は状況を示していますが、その先にある具体的な統治の形は、まだ言葉になっていません。
